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原材料・資材価格の高騰で、業況は更に悪化 調査データ・資料
原材料・資材価格の高騰で、業況は更に悪化〜北海道地域景況調査(2008年1〜3月期)概要と経営上の力点〜
1.深刻さ増す建設業、サービス業

 第1表の業況判断DI(「好転の割合」−「悪化の割合」)の2008年1〜3月期(今期)は、北海道全業種合計で2007年10〜12月期(前期)より4.8ポイント悪化し▲40.3となり、全国の全業種合計も8.7ポイント悪化しており、全国的に悪化基調となりました。特に建設業は、北海道が11.5ポイント悪化の▲59.1、全国が9.8ポイント悪化の▲38.0となり、北海道、全国共に厳しさが際立っています。また、北海道のサービス業は▲36.0から14ポイント下がって▲50.0ですが、次期(4〜6月期)は▲53.8と更に悪化の見通しとなり予断を許しません。
 第2表の売上高DI(「増加の割合」−「減少の割合」)は、北海道全業種合計が前期に比べて横バイの▲29.0でした。しかし、建設業では、前期から6.7ポイント悪化して▲59.1となり、冬場の売上確保がさらに難しくなっているようです。第3表の経常利益DI(「増加の割合」−「減少の割合」)では、全業種合計が1.8ポイント好転しているのに対し、建設業は9.2ポイント悪化の▲62.8となっており、利益を犠牲にした受注競争の激化が伺われます。
 第4表の@仕入単価DI(「上昇の割合」−「下降の割合」)の全業種合計は前期より更に3.6ポイント上がって62.8となりました。とりわけ、製造業は90.9と群を抜いています。第4表のA販売単価DI(「上昇の割合」−「下降の割合」)の全業種合計は、前期僅かに好転しましたが、今期は▲12.0から▲16.5となり、再び悪化に転じました。中でも、流通・商業、サービス業は仕入単価DIが大幅に上昇、一方販売単価DIは大幅に下落し、仕入単価の上昇を販売単価に転嫁できない中小企業の実態を示しています。

2.新年度を前に、積極的な営業展開と社員教育に注力〜「経営上の力点」のコメントから〜

 「昨年11〜12月の工事が継続しており、今年1〜3月期は、売上は増加しているものの、利益は薄くなっている。この冬期は、営業範囲を広げてみているが、結果は受注できる5〜6月にならないと不明です。雪の多い地方なので冬眠状態」。ある道北の建築関連業の方から寄せられた声ですが、建設業に限らず、この1〜3月期の各業種の実情を表しています。
 農業や工事が本格的に始まる春をまたずに、積極的な営業展開を推進しようとする企業が目立ちました。
・「小額・短工期工事の積極受注」(道央・建設付帯工事業)
・「展示即売会の実施」(道央・身の回り品小売業)
・「売上計画達成のための商品見本市開催」(道央・家庭用品卸)
・「数値による品揃えをするようになって売上微増が続いている。今後は更に数値を基に予測し、
 大胆に品揃えを強化する」(道東・衣料品小売業)
 また、「経営上の力点」で前期は上位3位から漏れた「社員教育」が再び3位に浮上し、
 「人材力」でスタートダッシュの新年度を迎えようとする気迫を感じます。
・「社員教育を予算化した。従業員持ち株会を設立し、モチベーションアップを図った」
 (道東・農産物卸)
・「社内の活性化のために、社員各々の使命を確かめる。業務に於けるプラスワンを設定し、
 その結果を活かす」(道央・情報関係業)
・「経営指針作りの取組みを全員で行った」(道南・サービス業)
・「社員個々に付加価値を記入させ、数字で自己の生産性を“見える化”した。
 今まで不明確だった顧客の担当者別管理、対応を徹底した」(道東・建築資材小売)
 一方で、「経費削減」のコメントがずいぶん多く寄せられています。中小企業のたゆまぬ経営革新の努力が、困難な中にあっても結果に結びつくような、経済政策と中小企業支援策を望みたいものです。

〈調査要領〉
調査時点 中小企業家同友会全国協議会が2008年の3月5日〜15日に実施した景況調査に合わせておこなった。
調査対象と回答企業 全国では2,237社から901社の回答、北海道は地域・業種を勘案して抽出した600社の会員企業から195社の回答を得た。
平均従業員数(役員含む・パートを除く) 全国37.4人 全道42.7人
※DI値は特に断りのない限り前年同期比。▲はマイナスを示す。

※参考

○DOR業況判断のDIの推移(全業種、前年同期比)

〈経営者の生の声〉

1)〈道南・建設業〉
労使一体で、経営指針をもとに高めた品質と技術力が高い評価に

 建設業界は引き続き公共事業予算の削減が続き困難な状況。得意分野(法面安定化工法)で営業を展開しているが、これも公共予算で影響が大きく先行不安。
 当社は毎春、経営方針の前年度総括と新年度方針確認を目的に全社員一泊研修会を開催している。全社員一泊研修会では、同友会の「21世紀型企業づくり」と当社の経営指針をISOで具現化することに取り組んできた。後継者や幹部、そして社員が育ち、労使一体の社風が定着。特に、施工技術について発注者から高い評価をしていただけるようになった。
 これからも日々研鑽し建設業であることを誇りに新たなテーマで民需開拓に挑戦していきたい。

2)〈道東・機械設計業〉
原価管理で徹底的に無駄を省き、採算が取れる業務体制に

 原材料は高騰している。2〜3年前と比較して、ステンレスは2倍、鉄に至っては3〜4倍になっている。製品の材料が鉄からステンレスに変化したことによって、耐用年数が長くなり、受注数が減少。その分新規を獲得しようと、道内の市場から道外にも目を向けているが、輸送費の問題があり、現在は見積もりのみとっている状況。この状況に対応するために、経理を公開し、社員教育によって原価管理の意識を末端まで浸透させること。それによって、製造計画を立て毎週確認を行い、社員ひとりひとりの生産性を上げることに取り組んでいる。

3)〈道央・建設コンサルタント業〉
課題・問題点を洗い出し、改善点・方針を明確化

 今年度の課題・問題点の洗い出しを実施し、成功要因と失敗要因に分け、それぞれ検証を行なう。短期的な改善点・方策、中長期的な改善点・方策別に実践計画を策定し、次年度方針に盛り込む。併せて各部門へ指示を出し、部門方針・目標の中で具体的に示し実行して行くことにした。
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