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業況判断は久しぶりに改善するも、予断許さず 調査データ・資料
業況判断は久しぶりに改善するも、予断許さず〜北海道地域景況調査(2007年4〜6月期)概要〜
1.業況判断DIは水面下ながら改善、しかし来期は悪化の見通し

 第1表業況判断DI(「好転の割合」−「悪化の割合」)の北海道全業種合計を見ると、2007年4〜6月期(今期)は1〜3月期(前期)調査より水面下ながら5.6ポイント改善し、1年3カ月ぶりの改善となりました。しかしこれは、回答企業数の43%を占める流通・商業が▲17.1から▲7.5へ9.6ポイント改善したことが要因であり、他の業種は、ほぼ前期並と言えます。とりわけ、建設業は前期より2.4ポイント改善したものの、▲31.7と依然深刻です。流通・商業の大幅な改善は、採算水準DI(「黒字企業の割合」−「赤字企業の割合」)(第4表参照)が、前期より26.9ポイントも改善したことの反映でしょう。しかし、全国の全業種合計では6.4ポイント悪化、悪化はすべての業種にわたり、中小企業の景気は下方傾向を更に強めており、北海道の先行きも楽観できません。実際、2007年7〜9月期の見通しを見ると、4〜6月期より全業種合計で0.8ポイント悪化と予想。特にサービス業では、11.1ポイントも悪化となっています。

2.売上高DIはやや改善、しかし経常利益DIは軒並み悪化

 第2表売上高DI(「増加の割合」−「減少の割合」)の全業種合計は、1〜3月期の▲15.5から4〜6月期の▲14.6と、やや改善の傾向を示しているものの、全ての業種で今なお水面下から浮上できない状態です。建設業は17.3ポイント、サービス業が8.3ポイント改善し、一方流通・商業では1.3ポイントと僅かに悪化、製造業が13.8ポイントも悪化するなど、業種で明暗を分けています。ただ、大幅に改善したように見える建設業ですが、▲23.2と最も厳しい業種であることに変わりはありません。7〜9月期の見通しを見ると、改善を予測する業種は建設業(1.7ポイント)、製造業(17.6ポイント)、流通・商業(2.0ポイント)となっており、サービス業のみ16.5ポイントと大幅な悪化を予測しており、大変気になるところです。
 第3表経常利益DI(「増加の割合」−「減少の割合」)の全業種合計は、今期が前期より3.4ポイント悪化し、各業種とも軒並み悪化となっています。中でも、売上高DIの改善値が高かった建設業は1.4ポイント、サービス業が11.2ポイント悪化しており、売上高の増加が利益アップに結びついていないようです。
 第4表採算水準DI(「黒字企業の割合」−「赤字企業の割合」)の4〜6月期の全業種合計は、07年1〜3月期の▲3.4から11.2へと再び黒字企業の割合が多くなりました。しかし、建設業のみ▲13.2と赤字企業の割合が多く、気になります。また、全国との比較では、全国の全業種合計が20.5と北海道のほぼ倍となっており、経済基盤の違いを感じさせます。
 第5表(1)仕入単価DI(「上昇の割合」−「下降の割合」)では、4〜6月期の全業種合計が前期より16.4ポイントも上昇。前期より全ての業種で上昇していますが、特に製造業は20.5ポイント上昇し、86.0と群を抜いています。
 第5表(2)販売単価DI(「上昇の割合」−「下降の割合」)の4〜6月期の全業種合計は、前期より4.8ポイント改善。しかしながら、建設業では8.5ポイントも悪化しており、採算に見合う単価の確保の難しさが伺われます。
 紙幅の関係で表は掲載していませんが、現在の資金繰りDI(「余裕の割合」−「窮屈の割合」)を見ると、4〜6月期の全業種合計では、7.8と前期の2.6から5.2ポイント改善して2期連続プラス値になりました。しかし、建設業は前期の10.5から0.0へ悪化し、今後の影響が懸念されます。短期の借入金利DI(「上昇の割合」−「低下の割合」)は、3.3ポイント低下したのに対し、長期は僅かに1.2ポイント上昇しています。

3.「営業戦略の見直」「経営指針の確立、社員教育」で難局を突破

 記述式の「経営上の努力」では、「採算を重視した提案営業の強化」「売上商品の軸をつくる」「自社の得意分野の再構築」「首都圏を対象にDM」などの営業戦略の見直しや、「賃金体系の見直しによるモチベーションの高揚」「若手社員向けの社内研修の強化」「60歳を越える熟練者による新入社員への技術の継承」「物流費の見直しによるコストダウン」など社内体制の強化が目立ちます。また、「同友会仲間の連携」「全員で経営計画書をつくり、V字回復が可能になった」など、同友会員同士の連携や経営指針づくりの有効性を示すものもありました。反面、「燃料費の高騰を運賃に転化できず、がまんを余儀なくされている」という悲鳴や、札幌以外の地域からは「人口が減少している地域からの撤退」との回答もあり、地域経済の厳しさが伺われます。
 中でも右の記述は、北海道の厳しい実態とその中で懸命に生き残ろうとする経営者の熱い思いが伝わってきます。早急に国や道の政策的対応を望みたいものです。

〈調査要領〉
調査時点 中小企業家同友会全国協議会が2007年の6月5日〜15日に実施した景況調査に合わせておこなった。
調査対象と回答企業 全国では2,395社から974社の回答、北海道は地域・業種を勘案して抽出した600社の会員企業から226社の回答を得た。
平均従業員数(役員含む・パートを除く) 全国39.6人 全道42.3人
※DI値は特に断りのない限り前年同期比。▲はマイナスを示す。

〈経営者の生の声〉
 「地域格差の中で、当地はいまだ経済下降が止まらず、先行きが見えない地域である。管内の工事は官需も民需も低迷しており、受注競争は激化している。企業として生きて行く事は大変厳しさを増しており、建設業者の生存は時間の問題と言わざるを得ない。世界に通じる技術を持ちながら、政策・行政・金融・雇用等の面から、大幅に縮小して消える産業である事実を実感している。その中でも当社は、地元の大手製紙工場と提携してエコドライ製品の建設資材を開発し、売り出しを懸命に行っている。また、雇用と給料の維持を全力で行い、社員のやる気を保ち、経営の継続を図りたい」(札幌以外の建設業)。

※参考

○DOR業況判断のDIの推移(全業種、前年同期比)
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